「治る」と「治す」

 

「治療」という言葉から連想されることは、治療者側の「治す」という営みです。内科的療法、外科的療法など、医療において「治す」

 

手段が目覚ましく開発された今日、現代の人の多くは心理的な問題にも「治してもらう」ことを期待し、医療者側も「治す」ことを

 

努力しています。

 

患者さんの症状を軽減し、治癒力の活性化のため薬物を用いることが有用な場合があります。

 

しかし、カウンセリング・心理療法においては、クライエントさんと臨床心理士との「関係性」を基盤に、「治す」だけでなく、

 

「創造的」、「発見的」な営みによって進めていくところに、その特質があります。

 

人間の個性がひとりひとり異なることを強調するならば「創造的」という表現となり、

 

一方、人間一般に対する考えや理論を考慮しつつ「発見的」に取り組んでいると表現することが、実際に感じに合う場合もある、

 

とかつて河合隼雄は述べています。

 

臨床心理士が治療技法を適用してクライエントさんを治すだけでなく、クライエントさんと臨床心理との間に築かれる関係によって、

 

共に困難や苦悩、課題を考え、自分自身を肯定的に考えられるようになっていく中で、

 

クライエントさんの潜在的な可能性がはたらき始め、困難や苦悩の解消に至る(治る)ところに、

 

カウンセリング・心理療法の特徴があります。

 

 

 

参考文献

小此木啓吾・深津千賀子・大野裕編 「精神医学ハンドブック」創元社、2005